安政6年2月28日三更半ば(29日午前１時頃)のこと。「ならまち」の一角、芝新屋町の元興寺（現華厳宗）の裏口で、急を告げる女の声とともに戸を激しくたたく音が響いた。
驚いて起きた下男留吉が戸を空けながら「なにごとか」と尋ねると、寺の借家に住む佐野屋の後家、お茂が血相を変えて「毘沙門町で火事や」と叫んだ。
･･･
このような書き出しで元興寺五重塔(大塔)炎上の様子が実況中継のように紹介されたところから五重塔の歴史が紐解かれています。
この焼失した元興寺五重塔(大塔)と、残された国宝の小塔。論文と史料を読み漁り、実測し、知れば知るほど謎が深まりましたと清水和彦さん。
著作「元興寺とならまちの建築・美術―語られなかった謎に迫る」（京阪奈情報教育出版）は、数々の謎が掘り起こされ、仮説を立て、ひとつずつ丁寧に解き明かしてゆきます。
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清水 和彦 さま プロフィール
1946年 広島県生まれ。
関西学院大学経済学部卒。
読売新聞大阪本社に入社。
神戸、奈良支局などを経て大阪本社地方部。
その後、事業局でイベントや美術展などの企画および運営を行う。
退職後は奈良市立入江泰吉記念写真美術館の「入江泰吉記念写真展」創設にかかわり、同賞実行委員会副会長を務めた。
現在、公益財団法人奈良まちづくりセンタ－理事
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